進化とは、長い時間をかけて生物の特徴を形成し、その生息環境に適応していくことです。時折、最近共通祖先を持たない生物同士が、選択圧によって、似ていますが関連性のない形質を獲得することがあります。これを収斂(収束)進化といいます。
収斂進化によって生じた構造は類似構造と呼ばれ、構造が異なっていても機能が類似しています。相同な特徴を持ちつつ、さらに構造も類似していることもあります。鳥やコウモリの翼は類似していますが、翼の中の前肢の骨は、遠い4肢の祖先から適応した相同なものです。一方、蝶の羽は、鳥やコウモリの羽と類似していますが、相同ではないです
。鳥とコウモリと蝶の羽のように、収斂進化の結果、ある2つの生物が共通の形質を持っていることが明らかな場合もあれば、そうでない場合もあります。形質の類似が収斂進化の結果なのか、それとも相同で祖先を共有した結果なのかを判断するには、対象となる生物のDNA配列を調べる必要があります。
イルカや多くのコウモリはエコロケーション(反響定位)を使って移動したり狩りをしたりしますが、哺乳類の蝸牛に存在する高音域の聴力を付与とされるタンパク質をコードする遺伝子Prestinが、関連性の低いコウモリでは収斂的に進化し、イルカでは相同的に進化していることがDNA配列のデータから明らかになりました。
構造的に類似した毒素や毒物が異なる種に存在することは、ある形質が類似しているのか相同であるのかを識別するために、DNA配列データが重要な役割を果たすもう一つの例です。
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