ある形質を受け継ぐ確率は、和の法則と積の法則を使って計算できます。和の法則は、互いに排他的な事象の確率を計算するために使われます。積の法則は、複数の独立した事象の確率を予測するものです。これらの確率則は、理論的な確率(事象が起こる前に、その事象が起こる可能性)を決定します。一方、経験的確率は、既に発生した事象に基づいて計算されます。
自分の家系に起こる常染色体潜性疾患であるビオチニダーゼ欠損症(BTD)を子供が遺伝するリスクを知りたいと考えている妊婦について考えます。未治療のBTDの乳児は、発育遅延、筋力低下、皮膚の発疹、脱毛などの症状が見られます。重症の場合は、痙攣や視力・聴力の低下などの症状が見られます。この女性も両親もBTDではないですが、彼女の兄弟がBTDに罹患している場合、両親ともに原因となる遺伝子変異を持っている必要があります。つまり、両親ともにヘテロ接合体(キャリアー)です。
その女性の子供がBTDを受け継ぐ確率は、その女性が原因となる対立遺伝子を1つ持っているキャリアであるかどうかにかかっています。BTDは常染色体潜性遺伝であり、女性は影響を受けていないため、原因となる対立遺伝子を2つもつことはないです。
子供のリスクを確認するための最初のステップは、母親が保因者である可能性の判断です。これには確率の和の法則を用います。和の法則とは、互いに排反な事象が起こる確率は、それぞれの確率の合計(和)になるというものです。この場合、互いに排反な事象とは、妊娠中の女性が受け継ぐ可能性のある親の対立遺伝子の組み合わせです。彼女の両親はどちらもヘテロ接合体(Bb遺伝子型)であるため、彼女は4つの可能な遺伝子型のうちの1つをもちます。すなわち、父方のBと母方のB(BB)、父方のBと母方のB(Bb))、母方のBと父方のB(Bb)、または父方のBと母方のB(bb)のいずれかになります。彼女はBTDではないので、bbの遺伝子型は除外されます。したがって、1/3の等しい確率で3つの可能な遺伝子型があり、そのうちの2つが保因者(Bb)となります。したがって、和の法則によると、彼女が保因者である確率は2/3(1/3 + 1/3)となります。
子供のBTDリスクのもう一つの重要な要因は、父親がキャリアである可能性です。ここで、席の法則が登場します。積の法則とは、複数の独立した事象がおこる確率は、個々の事象の確率の積で表されるというものです。母親が保因者であっても、父親が保因者であるかどうかには影響しません。したがって、両者は独立した事象になります。
子供がBTDを発症するには、複数の独立した事象が発生する必要があります。まず、母親がキャリアであることです(2/3の確率)。次に、父親が保因者であることです。父親がBTDに罹患しておらず、家族歴もない場合、父親が保因者である確率は一般人の確率(1/120)と同等とみなせます。第三に、子供は両親から潜性対立遺伝子を受け継ぐ必要があります(両親が保因者の場合、確率は1/4)。積の法則によると、子供がBTDを遺伝するリスクは、これらの各確率の積となります。すなわち、(2/3) x (1/120) x (1/4) = ~0.0014、つまり約0.14%です
。出生前に計算された子供のBTDのリスクである0.14%は、理論的な確率です。しかし、その子とその兄弟がBTDになる可能性はあり、このとき経験的確率は100%となります。事象が発生する前に計算される理論的確率とは異なり、経験的確率は観察に基づきます。単一の家系図を分析する場合、理論的確率と経験的確率は大きく異なる可能性があります。しかし、より多くの家系図を分析すると、理論的確率と経験的確率は次第に一致するようになります。
章から 12:
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