人体のほとんどの細胞には、約30億塩基対のDNAが23対の染色体に組み込まれています。この数字がどれだけのDNAを表しているのか、正確に想像することは困難です。では、ゲノムを細胞に収めるためには、どのくらいの量を詰めなければならないのでしょうか。
ゲノムを長さで表現することで、ある程度のヒントが得られます。ヒトの皮膚細胞のような1つの細胞のDNAを直線に並べると、約2 mになります。人間の体には約50兆個の細胞があります。これは、一人の人間が合計で約100兆メートルのDNAを持っていることを意味します。つまり、地球から太陽までの距離の300倍のDNAを持っていることになります。
しかも、人間のゲノムは特別に大きいわけではなく、魚や両生類、顕花植物のゲノムはもっと大きいものが多いです。例えば、顕花植物のParis japonicaのゲノムは、人間の二倍体ゲノムの25倍もあります。これらの数字は、真核生物が細胞内にDNAを詰め込まなければならないという、驚異的な作業を強調します。
ヌクレオソームは、8つのヒストンタンパク質のコアにDNAが巻き付いてできます。コアには、H2A、H2B、H3、H4という4種類のヒストンがそれぞれ2つずつ含まれています。また、もう1種類のヒストン(H1)は、ヌクレオソームとリンカーDNAの両方に結合し、構造を安定させます。
DNAは、ヌクレオソームとリンカーDNAが巻きついてクロマチン繊維となることで、よりコンパクトになります。ヌクレオソームは、この繊維の中では糸の上のビーズのようなものです。DNAの凝縮が進むと、10 nmの繊維は約30 nmの太さの紐になり、さらにその紐がループを形成して300nmの太さの繊維になります。クロマチンが完全に圧縮された状態はヘテロクロマチンと呼ばれます。
ユークロマチンのゆるい構造は、RNAポリメラーゼなどの酵素がDNAに近づけるようにします。そのため、転写は遺伝子の多いユークロマチン領域で主に行われる傾向があります。一方、ヘテロクロマチンは密に詰まった構造をしており、DNAへの接近を妨げ、転写を妨げています。ヘテロクロマチンは、染色体のセントロメアやテロメアに多く存在し、そこでは遺伝子よりも反復性の高いDNA配列がかなり多く見られます。さらに、生物は、細胞や外部環境の合図に応じて、DNAのパッキングのレベルをダイナミックに調整することができ、遺伝子をオンにする必要があるときにはDNAの凝縮を解除し、オフにするときには再び凝縮させることができます。
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