多相遺伝とは、1つの遺伝子が、一見無関係に見える複数の表現形質に影響を与える現象です。例えば、SOX10遺伝子の欠損は、色素異常、聴覚障害、排泄に必要な腸管収縮の欠如などを引き起こすワールデンブルグ症候群4型(WS4)の原因となります。SOX10は、色素形成や耳の初期発生に関与するメラノサイトを形成する神経堤細胞に見られます。SOX10は神経組織にも発現しており、最終的には老廃物の排出に必要な収縮をコントロールする腸の腸管神経系に貢献します。このように、SOX10は複数の表現型に影響を与える多面的作用を示しています。
多相遺伝にはいくつかのメカニズムがあります。遺伝子の多相遺伝は、ある遺伝子が複数のタンパク質と相互作用したり、複数の反応を触媒する産物をコードしたりすることによって、様々な機能を持つ場合に起こります。例えば、ヒトの場合、SOX10遺伝子の一部が欠損していると、前髪が白い、虹彩の色が違う(青と茶)、皮膚が色素沈着していない部分があるなどの発育障害が見られます。これらの症状は、常染色体潜性遺伝で、複数の色素異常を伴うワールデンブルグ症候群4型(WS4)と呼ばれる疾患の症状です。WS4におけるSOX10の多面的作用は、難聴など、一見すると色素形成とは無関係に見える症状にも及んでいます。また、WS4では、腸の収縮力が不足しているため、大腸が大きくなり、排泄が困難になります。これらの症状から、SOX10は、色素に影響を与えるだけでなく、聴覚にも影響を与え、腸の表現型の異常にも寄与していることがわかります。
SOX10が多面的な効果を発揮することができるのは、胚や胎児の発生初期に発現し、最終的にメラノサイトと呼ばれる色素細胞の形成につながる神経堤細胞に見られることから説明できます。また、後腸の末端にある神経節細胞にも発現しており、消化管の形成や腸管の収縮をコントロールしています。このことは、WS4の一部の人に見られる排泄障害や結腸の肥大を説明します。このように、SOX10は、複数の発生過程に影響を与え、複数の表現形質に影響を与えることから、多相遺伝性遺伝子の一例と言えます。
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