Method Article
* これらの著者は同等に貢献しました
本プロトコールは、シアノバクテリア培養物からの細胞外小胞の単離、濃縮、および特性評価に関する詳細な説明を提供する。異なるスケールの培養物から小胞を精製するためのアプローチ、方法論間のトレードオフ、およびフィールドサンプルを扱うための考慮事項についても議論する。
シアノバクテリアは、光合成のグラム陰性細菌の多様なグループであり、地球生態系において重要な役割を果たし、不可欠なバイオテクノロジーモデルとして機能します。最近の研究は、海洋と淡水の両方のシアノバクテリアが細胞外小胞 - 微生物の外表面から放出された小さな膜結合構造 - を産生することを実証しました。小胞は多様な生物学的プロセスに寄与する可能性が高いが、シアノバクテリア生物学におけるそれらの特定の機能的役割はほとんど知られていない。この分野における研究を奨励し、前進させるために、シアノバクテリアの細胞外小胞を単離、濃縮、および精製するための詳細なプロトコルが提示される。現在の研究は、プロクロロコッカス 、シネココッカス、およびシネコシスチスの大規模培養物から小胞を単離することに成功した方法論について論じ ている。これらの株からの小胞サンプルを定量および特徴付けるための方法が提示される。水生場サンプルから小胞を単離するためのアプローチも記載されている。最後に、シアノバクテリア小胞の精製で直面する典型的な課題、さまざまな下流用途の方法論的考慮事項、およびアプローチ間のトレードオフについても議論します。
細胞外小胞(EV)は球状構造で、直径は約20〜400nmの範囲で、事実上すべての生物によって周囲の環境に放出されます1,2,3。小胞は脂質二重層によって区切られており、それ自体を複製することはできません。グラム陰性菌では、これらの構造は主に外膜からの小さな部分の「ブレビング」によって生じると考えられている。それでも、鞭毛運動、細胞溶解、および内膜および外膜材料の両方の分泌を含む他のプロセスも、小胞を産生することができる4,5。EVは、脂質、可溶性および膜タンパク質、核酸、および代謝産物を含む様々な生体分子を含むことができ、細胞間でこの物質を輸送することができる4、5、6。これらの特徴を考慮して、EVは、細胞通信、バイオフィルム形成、水平遺伝子導入、宿主ファージダイナミクス、および栄養交換を含む幅広い生物学的プロセスにおけるそれらの可能な役割を理解するために研究されている4,6。
シアノバクテリアは、単細胞および糸状生物を含むグラム陰性細菌の大規模で多様なグループである。彼らは、生理学と多様性7,8、それらが果たす重要な生態系機能9,10、バイオテクノロジー11,12の有用性を理解するなど、多くの観点から興味深いものです。シアノバクテリアは、海洋、淡水、陸生環境の自由生活生物として、またはコケ、シダ、植物、または地衣類や海綿類との共生関連のいずれかで、多種多様な生息地で発見されています13。彼らは水生生態系における重要な一次生産者として機能し、酸素光合成9,10を通して酸素と有機炭素を生産し、一部は大気中の窒素も固定することができます7。プロクロロコッカス、シネココッカス、シネコシスチスなどの海洋および淡水のシアノバクテリアは、実験室条件下でEVを生産し14,15,16、シアノバクテリア小胞も自然環境14,17で見つけることができます。シアノバクテリア小胞の生物学的および生態学的機能は不明であるが、この分野におけるさらなる研究は、シアノバクテリアの生理学、分化、コミュニケーション戦略、進化、および栄養相互作用に関する疑問に対する新しい洞察を提供する可能性が高い。さらに、多様なカテゴリーの生体分子を運ぶシアノバクテリアEVの能力は、商業的用途を有する可能性がある18,19。
本プロトコールは、シアノバクテリアの細胞外小胞生物学のより広範な研究を可能にし、奨励するために、シアノバクテリア培養物およびフィールドサンプルから小胞を単離および特徴付けるための方法を記載する。ここで説明するワークフローは、他の細菌からEVを単離および特徴付けるためのプロトコルに類似しているが、シアノバクテリア培養物および野外サンプルは、典型的には、宿主関連または病原性モデル系で一般的に観察されるよりも低い細胞および小胞濃度を含む20,21,22。したがって、シアノバクテリアEVの研究には、培養および小胞単離のための特別な考慮事項および最適化が必要であり、これは株および培地の背景によってさらに異なる。単一のプロトコルがすべての菌株、成長条件、および下流のアプリケーションで同等にうまく機能するわけではないため、研究者が実験上の問題に対処するのに最も適したアプローチを決定できるように、複数のオプションを提供し、関連するトレードオフについて議論します。
シアノバクテリア株は、いくつかの培養コレクションから取得される(詳細については 、議論 を参照のこと)。
1. シアノバクテリア培養
2. 小粒子(小胞)画分からのシアノバクテリアバイオマスの分離
注:まず、細胞の遠心ペレット化によって上清から細胞を分離することをお勧めします。しかし、培養量が大きすぎてこれが実現できない場合、遠心分離をスキップし、カプセル濾過を用いて培養物全体を濾過することに直接進むことができる(ステップ2.4)。
3. 小胞サンプルの濃縮
4. 小胞の単離精製
5. 単離された小胞の特性評価
6. 小胞生産率測定
図1は、シアノバクテリア小胞単離プロセスの概要を示し、ここで説明するプロトコルの重要な側面を強調しています。特に注目すべきは、小粒子(vesicle)画分からのシアノバクテリアバイオマスの分離、小胞サンプルの濃縮、および小胞の単離および精製(図1、ステップ2〜4)を詳述するステップであり、これらは、小胞の再現性のある調製物を得るために重要である。図2は、シアノバクテリウム・シネコシスチス・エスピーPCC 6803からの細胞外小胞の単離および特徴付けからの代表的な結果を提示する。このシアノバクテリウムの外膜にはカロテノイド31が含まれていることが示されており、超遠心分離による直接ペレット化によって収集された小胞のサンプルに特徴的なオレンジ色の着色を与えます(図2A)。ベシクルペレットが再懸濁されると、ベシクルは透過型電子顕微鏡(TEM)、サンプルを酢酸ウラニルで陰性染色するか(図2B)、または超薄切片の観察(図2C)によって検査することができます。ベシクルのサイズ分布および濃度は、動的光散乱(DLS)(図2D)およびナノ粒子追跡分析(NTA)(図2E)を用いて評価することができる。記載されたプロトコールを用いて、典型的には、1.0のOD730でシネコシスティス・エスピーPCC6803の指数関数的に増殖する培養物において、mL当たり典型的には〜3.5±1.0 x 108個のナノ粒子が得られた。単離されたEVの生化学的分析は、単離された小胞の物理的特性評価を補完するために実施することができる。一例として、精製されたSynechocystis sp. PCC 6803小胞をSDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、リポ多糖類(LPS;図2F)。LPSは外膜32に特異的であるため、LPS検出は、膜結合小胞の存在を検証し、同じ株33からの調製物間の相対小胞含量を分析するためのマーカーとして役立つ。低分子量LPS対高分子量LPSの相対存在量の検査は、試料34、35間の小胞組成の変化を示すことができる。
図1:シアノバクテリアのEV単離および特性評価に使用した実験手順。 増殖培養物(1)および増殖培地からのシアノバクテリアバイオマスの分離(2)の概略図。小胞を含む無細胞サンプルを濃縮し(3)、EVを単離精製します(4)。用途に応じて、ベシクル調製物は、透過型電子顕微鏡(TEM)、ナノ粒子追跡分析(NTA)、動的光散乱(DLS)、およびリポ多糖(LPS)プロファイリングの1つまたは組み合わせを用いて特徴付けることができる(5)。RT, 室温. この図の拡大版を表示するには、ここをクリックしてください。
図2:シアノバクテリウム・シネコシスチス・エスピーPCC 6803についての細胞外小胞単離および特性評価の代表的な結果。 (a)600 mL Synechocystis sp. PCC 6803培養物から濃縮無細胞細胞外培地を超遠心した後に得られた細胞外小胞ペレット(EVsペレット)をOD730に増殖させた1.0-1.5の写真。外膜に見られるカロテノイドに由来する小胞ペレットの典型的なオレンジ色の着色に留意されたい。(B,C)Synechocystis sp. PCC 6803小胞サンプルの負染色された(B)および超薄切片(C)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真。スケールバー:それぞれ200nmおよび50nm。試料を80kVで操作した透過型電子顕微鏡で可視化した。(d)ベシクル直径(nm単位)の関数としてのベシクル体積の分布を描写する典型的な動的光散乱(DLS)プロット。色付きの線は、同じサンプルの3つのテクニカルレプリケート測定からのデータを示します。(e)シネコシスチス細胞外小胞のサイズ分布(nm単位)の代表的なナノ粒子追跡分析(NTA)データ。黒い線は3つの技術反復の平均を示し、赤い線は平均の標準誤差を表します。(f)リポ多糖(LPS)プロファイルは、16%(w/v)SDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動によって小胞調製物を分離し、市販のLPS染色キットで染色した後に検出された。粗いLPS形態および平滑LPS形態に対応する低分子および高分子LPSは、それぞれ検出可能である。この図の拡大版を表示するには、ここをクリックしてください。
補足ファイル1:rを計算する方程式。指数関数的増殖中の2点間(典型的には時間経過の始まりと終わり)の間の世代当たりの細胞当たりに産生される小胞の数は、この式を用いて決定される。 このファイルをダウンロードするには、ここをクリックしてください。
一般的な考慮事項
プロトコル(図1)は、シアノバクテリアの細胞外小胞を扱うための「万能」の方法がないことを強調するための一連のオプションとして提示されています。関心のある研究者は、特定のモデル生物、実験的な質問/目標、および機器の可用性に互換性があり、適切なこのプロトコルのセクションを利用できます。すべての小胞単離アプローチにはトレードオフが伴い、必然的にある程度のバイアスが生じます。可能な限りこれを最小限に抑えるよう努めるべきであるが、最も重要な考慮事項は、使用される詳細な方法論が適切なMISEV(細胞外小胞の研究のための最小情報)ガイドライン36に従って報告されることを確実にすることである。
文化の成長
シアノバクテリア培養物は、世界中で入手可能な多くの培養コレクションの1つから容易に入手することができる。いくつかの例は、ロスコフ文化コレクション(フランス、ロスコフの駅生物学)、パスツール文化コレクション(パリ、フランス、パスツール研究所)、および海洋藻類と微生物叢のためのプロヴァソリ・ギラード国立センター(NCMA、メイン州、米国)です。選択したシアノバクテリア株は、適切な培地および環境条件下で培養されなければならず、異なる株間で有意に異なる。シアノバクテリア培養に一般的に使用される培地のリストは、培養コレクションのウェブサイトまたは他の出版物37,38,39で見つけることができる。
シアノバクテリアの細胞外小胞を扱うことは、多くの典型的なモデル実験室従属栄養について報告された方法論と比較して、いくつかのユニークな課題を提示する。シアノバクテリア培養物は、大腸菌14、16、40などの他の微生物に見られるものよりも桁違いに低い小胞濃度を有する。これらの差は、おそらく低い細胞密度および/または小胞産生速度から生じるが、バルク分析に十分な材料を得るためには、比較的大きな培養物(〜1〜20L以上)が必要であり得ることを意味する。したがって、研究者は、小規模培養物からの小胞収量を試験して、所望の最終目標を達成するためにどれだけの材料が必要かを判断することが奨励されている。実験に使用した培地が検出可能な粒子状背景を有するかどうかを確立することの重要性は、その物質が小胞集団定量を混乱させたり、小胞濃度/サイズ測定の感度を低下させたり、最終的な小胞調製物を汚染したりする可能性があるため、実験を開始する前に強調する必要があります。
この分野のもう一つの課題は、すべてのシアノバクテリアが純粋な培養でうまく成長するわけではない、またはまったく成長しないことです。軸索的になるまで、物理的な小胞の特性、生産速度、または内容の解釈は、必ずしもコミュニティ内のいずれかの株によって産生される小胞に関する明確な結論につながるとは限らない。研究者はまた、特定のナノ粒子分析ツールによって、他の種類の粒子が存在し、潜在的に小胞と混同される可能性があるかを検討することをお勧めします。例えば、使用されている株が、ゲノムシーケンシング、誘導アッセイ、または他の手段 のいずれかを介して プロファージを欠いているか、または他のタイプの粒子状物質を放出していないことを確認することが不可欠であり得る。私たちの経験では、ほとんどのシアノバクテリア小胞は直径<0.2μmですが、新しい株や増殖条件を見るときは、0.45μmの細孔径フィルターを使用して精製粒子のサイズ分布が変化するかどうかを確認する必要があります。
培養条件の多くの態様は、小胞産生およびその内容物41、42に影響を及ぼし得る。したがって、培養増殖に使用される物理的および化学的条件(光放射照度、温度、および培地組成を含む)を文書化し、結果の再現性を保証するために可能な限り制御する必要があります。小胞内容物の化学分析は、特に「-omics」スタイルのハイスループット分析を実行する場合、バックグラウンド組成を考慮する必要があります。これは、天然の海水バックグラウンドに基づくものや、酵母エキスまたはトリプトンを補充したものなど、未定義の培地を使用する場合に特に重要であり得る。実験目標に応じて、定義された増殖培地を使用することが好ましい場合がある。
研究者は、培養の成長ダイナミクスを定期的に注意深く監視して、任意の時間後にサンプルを収集するのではなく、特定のバッチ培養が成長段階のどこにあるかを確実に把握する必要があります。小胞組成は、成長相全体、特に指数期と定常期との間で変化し得る41、42。例えば、固定期にサンプリングされた小胞の少なくとも一部は、指数関数的な増殖中には起こらない細胞溶解などの異なる細胞機構から生じる可能性がある。これはまだ生物学的に大きな関心事かもしれませんが、サンプルを知ることは不可欠です。シアノバクテリア培養物が、サンプル濃度に直接進むことができない時点で所望の増殖段階に達した場合、直ちに<0.2μm画分から細胞を分離し(遠心分離および/または直接0.2μm濾過)、次いで無細胞濾液を4°Cで保存することが推奨される。材料は、小胞の濃度またはサイズ分布にほとんどまたはまったく顕著な影響を及ぼさずに、この方法で数日間保存することができる。
小胞の浄化
大量の培養物から小胞を単離する頻繁な必要性は、シアノバクテリア小胞単離ワークフローにおいて極めて重要である。大量の材料を扱う場合、下流の分離ワークフローの前に小胞を濃縮する必要があります。公称分子量制限が100 kDaの濃縮器(接線流フィルター膜または遠心カラム)は、濃縮時間を合理的に保ちながら低分子量の可溶性物質からの分離を可能にするため、一般的に推奨されますが、30 kDaフィルターも頻繁に使用され、成功しています。小胞を精製するいくつかの非超遠心ベースの方法(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、マイクロ流体ベースのシステム、親和性捕捉技術、および沈殿ベースのアプローチ)が細胞外小胞分野で普及しつつあるが、我々の経験では、これらのアプローチは収量の減少をもたらし、典型的には必要な培養量と互換性がない。
研究者は、イオジキサノールバックグラウンドおよび小胞精製中に使用される洗浄/再懸濁緩衝液の組成を考慮して、それらが所望の下流用途と適合性があることを確認する必要があります。多くの場合、最終小胞サンプルは、成長培地または成長培地に匹敵する組成で定義された緩衝液(例えば、天然海水対人工海水)に再懸濁することができる。しかし、海洋シアノバクテリア小胞ではこれが不可能な場合があり、海水レベルに似た高い塩濃度は多くの酵素反応を阻害する可能性があるため、分析のためにさらなる実験操作が必要になります。このような場合、0.2μmの濾過、1x PBSなどの標準的な実験室緩衝液は、通常、海洋シアノバクテリア小胞の安定性を維持するために良好に作用し、下流の実験プロセスとより適合性があり得る。
密度勾配精製は、実験目標および培養組成に応じて任意と考えることができるが、より厳密に純粋で再現性のあるサンプルを製造するために強く推奨される。EV集団は不均一であり、様々な浮力密度にわたって見出すことができ、それらはひずみ、成長条件、および他の要因によってさらに異なる4,5,6。上に列挙した密度は、イオジキサノール中のシアノバクテリア培養物および野外サンプルからの小胞について典型的に見出されるものを表すが、他の株における結果は異なる可能性がある。スクロースおよびCsClなどの他の密度勾配材料を小胞に利用することができるが、それらはこれらの背景において異なる浮力密度に移行するであろう。異なる勾配培地の背景は、脂質封入ウイルス43の回収を偏らせる可能性があり、異なる株からの小胞の回収に潜在的に影響を及ぼす可能性がある。
ベシクルは、ここで説明するベシクル単離およびグラジエント精製プロセスを通じて複数のポイントで失われる可能性があり、下流用途で所与の最終ベシクル収率を達成するために必要な収率を低下させ、出発物質の量を増加させる。超遠心分離後の小胞ペレットを扱う場合は特に注意が必要です。いくつかのシアノバクテリア小胞は、小胞サンプルにある程度の色素沈着を貸す可能性のあるカロテノイドまたは他の化合物を有することができるが(図2)、材料の株または量によっては、小胞ペレットを直接視覚化できることは必ずしも期待されない。ペレットに予想される遠心分離機ローターの種類に注意してください。可能であれば、精製されたベシクルサンプルは、回収された最終材料の組成を検証するために電子顕微鏡によって検査されることが推奨される。
小胞およびその内容物に対する貯蔵条件の影響は、依然として未解決の問題である。貯蔵がシアノバクテリア小胞のサイズまたは濃度14に顕著な影響を及ぼさないことが見出されるが、単離された小胞調製物の機能性は経時的に変化し得る44。凍結/融解サイクルは可能な限り避けるべきですが、凍結サンプルが全体的な小胞の数とサイズに与える影響は最小限に抑えられているようです。凍結融解サイクルが、小胞関連核酸の長さやタンパク質の安定性など、小胞内容物の組成に影響を与える可能性に注意する必要があります。
Vesicles from field samples
自然の水生環境から細胞外小胞を単離するための現在の方法は、概念的および運用的に、大量培養についてここで説明したものと類似している。それでも、さらに多くの量の材料が必要になることがあります。このようなフィールドサンプルには、分析に十分な材料を得るために、数百〜数千リットルの水の収集、ろ過、および濃縮が含まれる場合があります。使用するサンプルの濁度によっては、0.2 μm フィルターの前に 1 つ以上の予備ろ過ステップを組み込む必要がある場合があります。使用される特定のTFFデバイスは、妥当な時間(理想的には時間単位)で、サンプルに過度の圧力をかけることなく、このような大量のものを扱うのに適している必要があります。実際には、これには多くの場合、培養ベースのサンプルに適用されるよりもはるかに大きな総表面積と、流量の増加を容易にするためのより大きな直径のチューブの使用が含まれます。この増加したフィルタ表面積は、より小さなTFF配置およびより大きな最終濃縮物量と比較して、粒子損失のわずかな増加をもたらす可能性が高い。ただし、これらの懸念事項は、合計処理時間の考慮事項とのバランスを取る必要があります。長時間の海洋クルーズなど、サンプルがサンプリング後何日もラボに戻らないような状況では、現場で最初の0.2μmろ過とTFFステップを実行することをお勧めします。この少量の濃縮材料は、最終処理のためにラボに返送されるまで、4 °C または -80 °C で (入手可能性と下流の分析上の考慮事項に応じて) 船上で保管できます。
有機および無機の両方の他の小粒子からの細胞外小胞の単離および分離は困難な場合があり、異なる粒子を分離する方法はまだ完全ではない。例えば、イオジキサノール密度勾配は、所与のサンプル中に存在する小胞およびウイルスのすべてのクラスを容易に分離するわけではないかもしれない。交絡粒子の種類とその物理的性質はサンプリングサイトによって異なるため、すべてのクラスの小さな水生粒子を堅牢に分割するプロトコルを提供することは現在不可能です。試行錯誤が不可欠であり、分離を最大化するためには、勾配および超遠心分離条件で使用されるヨージキサノール範囲での実験が必要になります。より小さな体積の集合体、より細かく分解された密度分数も必要であり得る。文脈に応じて、ヨウジキサノールの代わりにCsCl勾配を使用することは、環境粒子45を分離するのに役立ち得る。それでも、浸透圧条件の変化は、上で論じたように、最終的な回収生成物にバイアスをもたらす可能性がある。
小胞の特性評価
ナノ粒子分析機器は、微生物学の実験室環境ではまだ日常的に利用できませんが、ますます利用可能になっています。すべての方法論には長所と短所があり、シアノバクテリア小胞の作業のために他のすべてのプラットフォームよりも優れているという特定の支持はありません。実際、コスト、解像度、使いやすさ、検出限界、さまざまな成長メディア/バッファ背景との互換性、およびデータの再現性に関して、それぞれに特定のトレードオフがあります。上述のナノ粒子追跡分析に基づく機器に加えて、ナノフローサイトメトリー、マイクロ流体抵抗パルスセンシング、および同調可能な抵抗パルスセンシングを含む他のアプローチを適用することができる46、47。ユーザーは、海水ベースのメディアで一部のプラットフォームを使用するときに問題が発生した場合、利用可能な計装の詳細を学習し、それがシステムでうまく動作することを確認するように注意する必要があります。我々は、この分野が小胞のサイズ、濃度及び生産速度の定量的特徴付けに向けて動くことを奨励する。小胞濃度を、タンパク質含有量やその他の測定基準ではなく、1mLあたりの基本粒子ベースで測定することで、小胞をより定量的な枠組みに統合し、株や条件間の相互比較が可能になります。<100nm粒子の濃度測定値を較正する能力を改善するためのさらなる努力が必要である。
小胞産生速度測定が、粒子損失を最小限に抑えるために0.2μm濾過培養上清から直接行われるという事実は、上述の他の精製ステップと関連しているであろう。しかし、これは、このアプローチが必ずしも実際の細胞外小胞と培養物中に見出される他の小粒子とを区別するわけではないことを意味する。特定のサイズ範囲(例えば、直径50〜250nm)内の粒子を計数するだけで、いくつかの外れ値を除外するのに役立つかもしれないが、ペレット状の<0.2μm培養内容物が(TEMまたは他のアプローチによって)膜結合小胞であるように見えるという視覚的確認は、小胞様粒子の産生とは対照的に小胞の産生を測定していることを具体的に主張するために必要である。
ベシクル特性評価に不可欠な要素は、ベシクルサンプルがナノ粒子分析装置の適切な線形感度範囲で分析されていることを確認することです。サンプルが濃縮されすぎると、その材料をきれいなバッファーで希釈して再分析するのは簡単です。一方、一部のシアノバクテリア培養物の細胞および/または小胞密度が比較的低いため、一部の器具の検出限界を下回る小胞調製物が生成されることがあります。これがバルク小胞精製で起こる場合、より大きな体積の培養物の成長、より小さな体積で最終材料の再ペレット化および再懸濁、または単離プロセスに過度の損失が発生し、軽減できるステップがあるかどうかを評価することを検討することができる。小胞産生率を測定する場合、修正は必ずしもそれほど簡単ではありません。サンプルは必要に応じて濃縮できますが、最初のサンプルでは、培地の調整によって細胞密度が高くなるかどうか、または濃度が高くなる指数関数的な段階の後の時点から十分に濃縮されたサンプルが得られるかどうかを確認する必要があります。
制限
他のプロトコルと同様に、これらのアプローチを使用した小胞単離には明確な制限があります。これらのアプローチは、小胞の完全に純粋な調製物が単離されるという保証に依存しない。培養物および野外サンプルの両方に、密度勾配で小胞と同様に移動する他の材料が含まれていてもよい。それでも、少なくとも、これらのタイプの追加の精製方法論は、ベシクル分析の厳密さと再現性を確保するために不可欠です。シアノバクテリアの文脈で小胞単離アプローチを説明するが、他の多くの微生物の培養物も比較的低濃度の小胞を含むであろうし、ここで説明する手順は一般的に適用可能であるべきである。これらの方法は、恒久的なプロトコルとしてではなく、多様な微生物由来の細胞外小胞を扱う将来の進歩を促進するための出発点として役立つことが期待されています。これらの方法をサイズ排除カラムや非対称フィールドフロー分画などの他のアプローチとマージして、培養物や環境サンプルからの異なるカテゴリの小粒子の識別と分離を改善するための今後の努力が必要です。また、これらの技術がナノ粒子特性評価技術の改善とともに進化し続け、小胞集団内の不均一性、その内容、および環境におけるそれらの正確な機能的役割を調べる能力が向上することを期待しています。
著者らは利益相反がないと宣言しています。
著者らは、i3S科学プラットフォーム「バイオインターフェースとナノテクノロジー」と、国家インフラポルトガルバイオイメージングプラットフォーム(PPBI-POCI-01-0145-FEDER-022122)のメンバーである「組織学と電子顕微鏡」の支持を認めている。また、TEMの超薄切片染色プロトコルの最適化を支援してくれたJ. A. Gonzalez-Reyes教授(スペイン、コルドバ大学)と、ナノ粒子追跡分析に協力してくれたCecília Durães博士とAna Rita Pinto博士(ポルトガルのポルト大学)にも感謝します。
この研究は、米国国立科学財団(OCE-2049004からSJB)、COMPETE 2020 Operacional Program for Competitiveness and Internationalization(POCI)、ポルトガル、2020年、およびFundação para a Ciência e a Tecnologia/Ministério da Ciência、Tecnologia e Ensino Superior in the project POCI-01-0145-FEDER-029540(PTDC/BIA-OUT/29540/2017 to PO)を通じてポルトガルの資金によって資金提供されました。Fundação para a Ciência e a Tecnologiaは、PhDフェローシップSFRH/BD/130478/2017(SL)およびFCT研究者助成金IF/00256/2015(PO)でも高く評価されています。M.C.M.-M.Horizon 2020フレームワークプログラム(H2020-MSCA-IF-2018-RI-844891)内のMarie Skłodowska-Curie個人フェローシップ(再統合パネル)の支援を受けました。
Name | Company | Catalog Number | Comments |
1x Phosphate buffered saline (PBS), pH 7.4 | Home-made buffer | --- | Standard wash/storage buffer which can be used with vesicles; can be made in lab or purchased commercially |
2% Uranyl acetate solution | Electron Microscopy Sciences | 22400-2 | Negative staining - TEM |
4x Laemmli Sample Buffer | Bio-Rad | 161-0747 | Denaturation of vesicle sample prior to proteolysis, required for lipopolysaccharides (LPS) staining |
Amicon Ultra Centrifugal Filters (100 kDa) | Merck | UFC9100XX | Alternative option for centrifugal ultrafiltration |
BG11 medium | Home-made medium | --- | Medium for cultivation of Synechocystis sp. PCC 6803 |
Carbon Support Film 200 Mesh, copper. CF200-Cu | Electron Microscopy Sciences | 71150 | Transmission electron microscopy (TEM) grid |
easiGlow Glow Discharge Cleaning System | Ted Pella | 91000 | Commercial TEM grid glow discharger |
EMbed 812 epoxy resin | Electron Microscopy Sciences | 14120 | Ultra-thin sections - TEM |
Filter holder for vacuum system | Thermo Fisher Scientific | 300-4000 | Reusable units with filter membrane support plates |
Glutaraldehyde Grade I | Sigma-Aldrich | G5882-10X1ml | Ultra-thin sections - TEM |
HEPES [N-(2-Hydroxyethyl)piperazine-N′-(2-ethanesulfonic acid) sodium salt] | Sigma-Aldrich | H7006 | Buffering agent for cyanobacterial growth media |
Lead Citrate, Trihydrate | Electron Microscopy Sciences | 17800 | Stain for use in electron microscopy |
Macrosep Advance Centrifugal Devices with Omega Membrane 100K | Pall | MAP100C36 | For centrifugal ultrafiltration of small volume samples |
Millipore Pellicon 3 TFF Module | EMD Millipore | XX42P0060 or XX42P0080 | Alternative TFF option for concentrating large volume samples |
Milli-Q Reference Water Purification System | Merck | Z00QSV0WW | Water purification system for obtaining type I ultrapure grade water |
NanoSight | Malvern Panalytical | LM14 or NS300 | Nanoparticle tracking analysis |
Optima L80 XP Ultracentrifuge | Beckman Coulter | L80 XP | Ultracentrifuge (or similar model) |
OptiPrep / Iodixanol | Sigma-Aldrich | D1556 | Density gradient media |
Osmium Tetroxide Reagent Plus | Sigma-Aldrich | 201030 | Ultra-thin sections - TEM |
Pall Centramate PE TFF holder | Pall Corporation | FS002K10 | TFF module good for concentrating 10s-100s of L of sample; requires additional 30 or 100 kDa filter modules to scale with your estimated volumes |
Peristaltic pump Masterflex L/S | Cole-Parmer | 07559-07 | Pump for driving large-scale TFF modules |
Piston Gradient Fractionator | Biocomp Instruments | 152-001 | Automated density gradient fractionation |
Polycarbonate tubes for the 70 Ti rotor | Beckman Coulter | 355618 | Reusable ultracentrifuge polycarbonate aluminum tubes with cap assembly |
Pro99 medium | Home-made medium | --- | Medium for cultivation of Prochlorococcus |
Pro-Q Emerald LPS Gel Stain Kit | Thermo Fisher Scientific | P20495 | LPS staining |
SN medium | Home-made medium | --- | Medium for cultivation of cyanobacterial marine strains such as Synechococcus |
Sodium cacodylate trihydrate | Sigma-Aldrich | C0250-100G | Buffering agent in the preparation of vesicles samples for TEM |
SW32Ti swinging bucket rotor | Beckman Coulter | 369650 | Ultracentrifuge rotor, holds 6x ~40 mL tubes; good for pelleting of bulk material |
SW60Ti swinging bucket rotor | Beckman Coulter | 335650 | Ultracentrifuge rotor, holds 6x ~4.5 mL tubes; good for gradient purifications and final vesicle washes |
Syringe 1mL Luer | BD Plastipak | 303172 | For vesicle isolation and loading samples into nanparticle tracking analysis (NTA) equipment |
Syringe filter 0.2 µm | Pall Corporation | 4602 | For vesicle isolation from cultures |
TAPS [N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]-3-aminopropanesulfonic acid] | Sigma-Aldrich | T5130 | Buffering agent for cyanobacterial growth media |
Transmission electron microscope | JEOL | JEM-1400 | Or similar microscope |
Type 70 Ti Fixed-Angle Titanium Rotor | Beckman Coulter | 337922 | Ultracentrifuge rotor, holds 8x ~39 mL tubes; good for pelleting of bulk material |
Type XIV protease from Streptomyces griseus | Sigma-Aldrich | P5147 | Enzyme for proteolysis of EVs proteins, required for LPS staining |
UltraClear tubes for the SW32Ti rotor | Beckman Coulter | 344058 | Single use ultracentrifuge tubes |
UltraClear tubes for the SW60Ti rotor | Beckman Coulter | 344062 | Single use ultracentrifuge tubes |
Ultramicrotome PowerTome XL, PT-PC | RMC Products, Boeckeler Instruments | 75501 | Microtome for ultra-thin sections - TEM |
Universal 320 R centrifuge | Hettich | Z654736 | This or any similar general-purpose benchtop/floor standing centrifuge can be used for pelleting cells |
Vacuum apparatus | KNF Neuberger | N026.3 AT.18 | Or any similar vacuum pump and trap |
Vivaflow 200 100,000 MWCO PES | Sartorius | VF20P4 | TFF module, good for 2-3L. You can connect different modules for higher volume (figure 1). |
Whatman Polycap TC Capsule filter (0.2/0.2µm) | Cytiva | 6717-9502 | Capsule filter for filtering large volumes of liquid |
Zetasizer | Malvern Panalytical | Zetasizer Nano ZS | Dynamic light scattering (DLS) instrument |
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